以前の記事
フォロー中のブログ
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ニライカナイ。
海の向こう、遥か彼方にある神々の住む楽園。 毎年そこから神さまがやってきて、あらゆる恵みや幸せを運んできてくれる。 古くから南の島に暮らす人々の間で、そう信じられている。 沖縄、八重山諸島のひとつ、竹富島。 うつぐみの精神が残る島。 その島で生まれた少女、安里風希(蒼井優)は6歳のときに大好きなおかぁ(南果歩)が、 仕事のために東京へ行ってしまう。 それから一年後おかぁを迎えに行ったおじい(平良進)は一人で帰ってくる。 落胆する風希に、おじいはおかぁから預かってきた手紙をわたす。 『風希 お誕生日おめでとう・・』 その書き出しではじまる温かな手紙は、次の年もそのまた次の年も誕生日に届いて、 いつも優しく励まし勇気を与えてくれる。 十四歳の誕生日に届いた手紙には、二十歳の誕生日に会ってすべてきちんと話す、 と書かれていた。 島の郵便局長を務めるおじいと二人で暮らし、おかぁに会えないまま手紙だけが増えてゆく。 やがて風希も高校卒業の時期を迎え進路に悩む。 小さい頃に亡くなった父親の遺したカメラを使い、趣味で写真を撮っていた風希は、 プロのカメラマンになりたいという夢を持つようになっていた。 東京にでて本格的に写真の勉強がしたい。 それを、なかなかおじいに打ち明けられず悩む風希の元に、 今年の誕生日もおかぁからの手紙が届く・・・。 映画館に行くと、僕は今も子供の頃と変わらずワクワクします。 作品の内容や作品に対する期待の大きさは関係なく、 初めての劇場も何度も行っている映画館でも変わりません。 チケットを買って、開場までロビーで待つ。 グッズを物色し、次回上映作品のチラシをチェックする。 飲み物を買ってベンチに座り、劇場スタッフや同じ映画を待っているらしき人たちを眺める。 持ってきた小説を読んだりもするけれど、あんまり頭に入ってこない。 ソワソワ、フワフワ。 この落ち着かない感じがなんとも心地良い・・。 僕はこの時間がとても好きです。 劇場に行くかビデオで観るか? 『これは迫力のある映画だから映画館で観たい』 『こういう静かな映画はビデオでいい』 というふうに決める人は結構いると思います。 その気持ちはよくわかります。 以前、世界に誇る素晴らしい音響設備を備えた劇場で、ある戦争映画を観た時、 冒頭の戦場シーンで後方から迫り来るヘリコプターの爆音の凄まじさと臨場感に、 思わず後ろを振り返ってしまったことがあります。 僕の部屋にある、日本が誇る世界のSONY製21型ステレオテレビ。 これを背に同じシーンを観ても、絶対に振り返らない。 『ニライカナイからの手紙』この作品は、とても静かな映画です。 沖縄を舞台にした映画によくある、南の島特有の陽気さはありません。 舞台になっている竹富島に今も残るうつぐみの精神とは、 お互いに助け合って生きて行くということ。 島の住人たちと共に、ただ静かに、少女の成長を見守る映画です。 静かな物語のカギになるのが手紙です。 心のこもった手書きの手紙には、パソコンやケータイのメールにはない、 特別な力があると思います。 便箋に想いを書き、宛名を書き、封筒に切手を貼り、ポストへ投函する。 今時、手間のかかる通信手段です。 そして、すぐには届かずメールより時間もかかります。 でも、その時間が逆に良かったりします。 かなり昔ですが、当時付き合っていた恋人にこっそり手紙を出しました。 内容は覚えてませんがなんてことない内容だったと思います。 その手紙が届くまでの一日か二日、その間もメールや電話は普通にしていました。 もちろん、手紙の件は話しません。 ちょっとしたドッキリを仕掛けているようで手紙が届くまでの時間が 結構楽しかったですし、届いたら彼女も結構喜んでくれました。 また、ある人から貰った手紙は、 強さを秘めた優しさと思いやりに溢れた手紙でした。 ボールペンで書かれた文字の丁寧さや筆圧から、 そこに書かれた言葉の意味をこえた想いが伝わってきて、 とても感動しました。 主人公の風希もおかぁからの手紙に優しく励まされ、 時には反発しながらもそこに書かれた言葉達に支えられて大きくなります。 沖縄方言の優しい響きと静かな作品の中で魅せる、 平良進さんの力強く深みのある存在感。 蒼井優さんの繊細な演技に引き込まれ、 今までで一番多く涙を流しました。 そして物語の盛り上がる終盤、僕の座った列の端のほうから声が聞こえてきました。 最初は小さかった声がはっきりと聞き取れるほど大きくなってきます。 『・・あぁ、おじいちゃん帰ってきた・・』 『・・風希が立った・・』 なぜか、端に座ったおじさんが画面の見たままを解説しているのです。 そんな解説はいりません、ましてや終盤の良いところです。 さりげなく咳払いで注意を促しましたが効果がありません。 いらない解説は続きます。 僕はおじさんを劇場の外へつまみ出す勢いで注意するため立ち上がろうとしました。 けど、・・やめました。 おじさんも泣いていたからです。 ボロボロ泣いていました。 僕は鼻水を垂らし泣いていました。 静かな映画の、空席が目立つ劇場で、 たくさんのすすり泣きが聞こえます。 そこにいた全員が泣いているようです。 良い映画でした。 僕はどんな映画も映画館で観たいです。
by cinefoot
| 2006-02-16 03:12
|
ファン申請 |
||